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LOOKSTAND_CROSS TALK vol.4

JAPAN FASHION WEEKの今城さんに聞いた
グローバル視点でのLOOK BOOK

LOOKSTAND_CROSS TALK vol.4(JAPAN FASHION WEEKの今城さんに聞いた<br>グローバル視点でのLOOK BOOK)

本媒体「le LOOK STAND」の編集長、佐藤リッキーがゲストを訪ね、 “LOOK BOOK”の可能性を探っていく連載の第4回。

毎シーズン、各ブランドが、“LOOK”を形にするまでには、ブランド、製作チーム、PRと多くの人が携わり、知恵を絞っているはず。そんな“LOOK BOOK”と密な関係にある方々に、その意義や疑問を問いかけ、ファッションの現在に迫る連載企画。

第4回のゲストは、一般社団法人日本ファッション・ウィーク推進機構(以下、JFW推進機構)の今城薫さん。 今年の8月には楽天がJFW推進機構の冠スポンサーに就任することが発表され、ネットショッピングの国内最大手とのマッチングによる新体制が注目を集めている。 「Japan fashion Week」での各ブランドの動向から商談に至るまでを目撃してきた今城さんに伺ったのは、 ファッションを事業として捉えたときのLOOKBOOKの重要性について。 グローバルな目線も交えて話してくださいました。

今城さん
1985年神奈川県生まれ。1991年~1997年、父親の仕事の関係でアメリカミシガン州に移住。2007年、慶應義塾大学理工学部卒業、伊藤忠ファッションシステム株式会社入社。一般社団法人日本ファッション・ウィーク推進機構のプロジェクトとしてTOKYO FASHION AWARD、FASHION PRIZE OF TOKYO等の運営を担当。2019年、一般社団法人日本ファッション・ウィーク推進機構 ディレクター就任、BoF 500に選出。

佐藤リッキー
本媒体「le LOOKSTAND」編集長。合同会社「Yello」CEO。 清澄白河のホテル「LYURO」、「第一ホテル」チャペル、「H&M」ショッパー、「蔦屋書店」シーズングラフィック、「LOFT GINZA」のオープニングアートディレクション等、コンセプトメイキングから空間、グラフィックデザイン、プロダクトのディレクションなど活動は多岐にわたる。現在、毎年採れたてのオーガニックコットンで作る違いを愉しむ今年のタオル「コットンヌーボー」、創業1585年の扇子ブランド「西川庄六商店」など複数のプロジェクトを進行中。

LOOKSTAND_CROSS TALK vol.4(JAPAN FASHION WEEKの今城さんに聞いた<br>グローバル視点でのLOOK BOOK)
―ファッションショーとLOOKBOOK
リッキー:多くのブランドがファッションショーを行ったり次シーズンのコレクションを発表したりする、ファッションの祭典、ファッションウィークですが、その運営を続けてきた今城さんにお伺いしたいのは、ショーについてです。シーズンテーマを反映したクリエイティブという点ではLOOKBOOKとショーは共通しています。今城さんはその違いについてどうご覧になっていますか?

今城:まさに、表現が異なっていますよね。ファッションショーの最大の特徴は生のライブだから五感で感じられるところ。空間演出や音楽も重要で、お客さまのなかには各ブランドがショーで使った楽曲をチェックして楽しんでいる方もいるくらい。多くの要素で服の世界観を拡張させながらも、洋服の現物そのものを見せられる。 一方で、LOOKBOOKはデータや印刷物で完成された世界観を作り上げられることが利点。ブランドの提案するスタイルを明確に届けることができます。ですからショーを行うブランドのほとんどがLOOKBOOKを作っていますね。本の装丁にはしないまでもブランドのイメージを伝えるためのLOOKのデータは誰しも用意しているようです。

リッキー:つまりLOOKBOOK(ないしはLOOK)は必須の媒体であり、ショーはブランドの世界観をさらに発展させる手段だと捉えられているんでしょうか?

今城:そうとも言えそうです。JFW推進機構にいながらも誤解を恐れずに言うと、ショーがブランドにとって絶対的に必須だとは思いません。もちろん各ブランドそれぞれにショーをすべきタイミングがあり、した方がいいケースもある。けれど、LOOKBOOKはそれ以前に必要なものだと思っていますね。

LOOKSTAND_CROSS TALK vol.4(JAPAN FASHION WEEKの今城さんに聞いた<br>グローバル視点でのLOOK BOOK)
―LOOKBOOKは機能的?
リッキー:今城さんの立場から、必ずしもショーは必要ではないというお話しが聞けるとは思いませんでした。改めて、LOOKBOOKが必要な理由について聞かせていただけますか?

今城:LOOKBOOKは展示会で必ず必要になるからです。私たちもファッションウィークの事業の一貫として海外での展示会を取り仕切ることがありますが、どのブランドも春夏と秋冬の2回の展示会のタイミングに合わせて準備して来られます。

リッキー:以前、「にしのや」代表の西野大士さんへの取材で同じことをお伺いしましたね。ピッティ・ウオモの展示会に参加された時に現地のバイヤーさんから必ずLOOKBOOKをリクエストされたそう。その経験を踏まえて2度目の参加では、出発の直前にご自身でスタイリングを組んで撮影して持って行かれたというエピソードを伺いました。 今城さんは、ブランド側とバイヤー側のどちらの声も聞いていらっしゃると思いますが、バイヤー側がLOOKBOOKを欲しがる理由はどういうところだと思われますか? 展示会場で商品サンプル自体を見ているのに必要なものでしょうか?

今城:一番の役割は、着た時のシルエットを見せることですね。展示会中にフィテッィングモデルさんをアサインすることもできますが、全ての服が一覧できるデータがある方がやはり便利。そして第二にスタイリングです。組み合わせによる世界観はもちろん知りたい。Tシャツ一枚にしても、どんな靴やパンツや帽子を合わせるのか…トータルで成り立つのが洋服ですから一つのルックとして見たいところです。 さらにシーズンテーマも簡潔に表現もしやすい。例えば2020年の春夏シーズンでは水の波紋をモチーフに制作をされたブランドさんがいらっしゃいますが、ボタンや細部にそのイメージを反映させていました。LOOKBOOKにも波紋だけを撮影したカットが入っていたりすると説明として分かりやすいですよね。

ブランドによってベストな見せ方が異なるので一概には言い切れないものの、知りたい情報が一目でわかるLOOKBOOKはやはり機能です。うまく表現できればLOOKごと買い付けられるバイヤーさんもいますからね。

LOOKSTAND_CROSS TALK vol.4(JAPAN FASHION WEEKの今城さんに聞いた<br>グローバル視点でのLOOK BOOK)
―アパレル事業としてのLOOKBOOKの重要性
リッキー:なるほど、LOOKBOOKは”B to B”段階での販売促進でもありブランディングにもなっているわけですね。 ビジネスとして、デザイン・MD・PRが三位一体であることの重要性についても本媒体では話してきているのですが、そのなかでスケジュール管理は大切ですよね。物づくりに時間をかけるのは素晴らしいけれど、いいものが出来たことを世の中に伝えられなければ何の意味もないわけで…。その点、日本のブランドは年間を通しての段取りは行き届いているのでしょうか?

今城:なかなか難しいところです。例えばLVMHグループ傘下のブランドのように、マーケティング専任のプロモーターがいてデザイナーの下には何十人と優秀な部下がいて…と、恵まれた環境がどこにでもあるわけではありませんから。特に日本の若いブランドは品質の高いものづくりに必死になりながらもPRまで一気通貫のスケジュールを組む余裕がないことも多いようですね。

リッキー:特に、金銭的にタイトな状況にあるブランドさんはLOOKBOOKの制作はやめてしまうことも多いように見ています。

今城:勿体無いですよね。LOOKBOOKを見せられるタイミングは、展示会でバイヤーに向けた“to B”、実売期のカスタマーに向けた“to C”の二回あるわけです。LOOKBOOKとして紙の体裁にする余裕がないにせよ、今はインスタグラムで見せる手段もありますからビジュアル制作はお金をかけて損のない部分。デザイナーさんは想いがあって服を作られているんですから、その世界観を“to B”と“to C”のどちらにも届けていっていただきたい。

LOOKSTAND_CROSS TALK vol.4(JAPAN FASHION WEEKの今城さんに聞いた<br>グローバル視点でのLOOK BOOK)
―ショーを開催することの利点
リッキー:LOOKBOOKないしはビジュアル制作をすることを前提にしながらも、ショーの利点はどんなところにありますか? 作り込んだ会場でキャットウォークを見せる従来型のショーだけではなく、最近はインスタレーションのような形態も増えていますが、どちらにせよ、数分〜数十分のために大きなエネルギーをかけられています。

今城:まず、各ブランドの服によって適切な表現は違いますから、昨今のショーの多様化はごく自然なこと。キャットウォークが適している服もあれば平置きで見せた方がいい服もあるわけで…そういった意味で、ショーにこだわる必要はないとお話しさせていただきました。

ただし、どのような方法をとるにせよファッションウィークに参加することで認知度が大きく上がるのは確かです。インスタグラマーやセレブリティ、各メディアの編集者、バイヤー…と、ファッション業界の関係者を中心に幅広い方に見ていただける。 そして、フロントローの顔ぶれにも注目が集まります。誰が座っているかによってブランドのポジショニングが担保されたり話題になったりする。影響力の強い人に拡散していただける可能性もあります。ショーの利点は、PRでの側面も大きいんですよ。

リッキー:確かに、『ランウェイはそのサイド(フロントロー)が主役』というお話をスタイリストさんからも伺ったことがあります。商談に照準を向けるというよりは、ファッション業界全体とファッション通の方々へのアプローチに特化しているんですね。

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―JAPAN FASHION WEEKを選ぶ意義
リッキー:また、日本のファッションウィークもSNAPがもっと盛り上がったら楽しいでしょうね。海外のパリ・ロンドン・イタリア・ニューヨークでの開催を4大コレクションとするとそれぞれのSNAPに特色がありますよね。東京では、独特なフューチャリズムや “カワイイカルチャー”ばかりが注目されますが、リアルなストリートなど東京ならではの多様性を巧くメディアに出すことができればイベントとしての訴求力は強まりそうです。 今城さんは、海外のファッションウィークと比べて”東京”の立ち位置をいかが思われていますか?

今城:正直、認知度や影響力としてはまだまだ努力が必要なところです。ですがその分、伸び代も大いに感じています。というのも、4大コレクションを経験した上で、あえて東京に戻ってきてくれるブランドも多い。また、毎年出場される50ブランド中の半分以上が前シーズンからの継続ブランドになっています。

リッキー:東京コレクションをポジティブに捉えているブランドさんも多いということですね。

今城:海外で百貨店と商談するとして、一回の商談で10着程度しか卸せないことも一般的。ところが日本はセレクトショップは地方まで広く展開されています。ビームスさんやユナイテッドアローズさんのバイヤーの方のー人と話せば、何十店舗にも卸せて、何百点と買いつけていただける可能性があるわけです。

一方、東京コレクションの弱点としてはまだ”B to C”の爆発力が足りない。苦戦の理由の一つは東京のファッションのカテゴリーの多さ。ファッションマーケットは大きいもののモード系・ストリート系・マダム系・原宿系や…と人気が分散しています。ガールズアワードさんのような他のプロジェクトもあるために、我々モード層のパイが単純に小さい。

リッキー:なるほど。僕としては、JAPAN FASHION WEEKの名の通り、JFW推進機構さんが日本のファッションの中心であってしかるべきだとも感じているんです。ですから、イベントの企画なんかにも期待したいです。過去の企画で面白かったのは、ドレスキャンプさんのショー直前に、突然、若手ブランドがゲリラ的なショーを行う「ハプニング」。ああしたイベントはファッションの起爆剤になりますね。 冠スポンサーが楽天さんに代わった今後、どのような展開があるんでしょうか?

今城:「ハプニング」はスタイリストの伏見京子さんが尽力してくださり、有難いことに好評をいただきましたね。おっしゃる通りJFWが盛り上がるためには強いコンテンツが必要だと思っています。インスタグラムの活用やアワード仕立てにしたりと手段はすでに出尽くしていますから、今、考えているのはどんなデザイナーと何を組み合わせるか。本質のところですね。 特に、今年は楽天さんと協力しながらファッション感度の高い人にいかに働きかけができるのかが鍵になりそうです。楽天さんとだからこそ面白い企画を模索していますので、是非、注目していてください。

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―JAPAN FASHION WEEKの今後と、LOOKSTANDにできること
今城:ザ・ビジネス・オブ・ファッションの記事で、UAのポギー小木さんがおっしゃっていたことですが、今後、日本人デザイナーが海外で活躍する可能性は大いにあると思っています。というのも、日本人デザイナーは昔から本来とてもいい環境にいて、探究心と技術のある生地屋さんや縫製屋さんと共に、素晴らしいものづくりをしてきました。ただ、英語が苦手だったりインタビューが恥ずかしいという理由でインターナショナルに活躍する機会を得なかった。 ところが、今の20代の世代はその感覚が変わりフラットにグローバルに出ていける雰囲気がある。だからもう5〜10年くらい待てば海外進出が大きく広がる可能性ある、とおっしゃっていました。

私はそれに、とても共感しています。昨今、優秀なデザイナーさんの独立も相次いでいますから、英語も勉強してアグレッシブに営業してステップアップしてほしいと感じています。

リッキー:日本人デザイナーが海外へ出てしまうことに、“東京”のファッションウィークが盛り上がって欲しい気持ちと、ある種の矛盾に葛藤はあったりされませんか?

今城:いえいえ、全くありません。日本人が海外のファッションウィークに出られるのも大いに嬉しいですし、結果的には東京のファッションシーンが元気になることにつながるはずですから。各ブランドが適しているタイミングで東京に戻って来てくださればいい。その時々のビジネスの意義でJFWを選んでいただければ、と。 また、JFWでは海外のバイヤーやメディアも招待していますから、まだ海外に出ていないブランドにしてはまず東京でファッションウィークに参加していただくのはもちろんメリットがあると思いますよ。

LOOKSTAND_CROSS TALK vol.4(JAPAN FASHION WEEKの今城さんに聞いた<br>グローバル視点でのLOOK BOOK)

リッキー:我々もJFWがより盛り上がることを楽しみにしたいのですが何かできることはありそうでしょうか? 例えばファッションウィークのシーズン限定で、“東コレ”の参加ブランドのカテゴリーをまとめて見せることはできるのですが…。

今城:確かにJFWのHPにはランウィを撮影したLOOKは載せていますが、LOOKBOOKの集積はしていません。特にバイヤーさんですと気になったブランドのLOOKBOOKは過去を遡って見たい方もいるでしょうから、一箇所にまとまっていて見直せると助かるかもしれませんね。 また、こちらでも展示会の案内を小さく載せているのですがあまり目に留まっていないようで…その点ももしかしたらLOOKSTANDさんと連携できる部分なのかもしれません。

リッキー:我々としてもLOOKBOOKのライブラリーでありたいと思っていますので、各ブランドさんの営業ツールになって行くのは嬉しいところ。

今のLOOKSTANDでは偶然性を重視してランダムにLOOKBOOKを掲載しています。街に出かけると買い物ついでに全く新しいブランドに出会ったりもしますし、そんな新しい発見がこのメディアでも生まれて欲しい。

そして今後はアナリティクスによるオススメ機能やあるいは類似ブランドの紐付け、今城さんがおっしゃったような展示会情報との連携…など機能を増やしていく段階も考えています。ファッション業界のみなさんと相談しながら有用性を高めたい。今日は今城さんにビジネス視点でのLOOKBOOKの重要性を改めて確認させていただき、今後の方向性も見えてきたように思います。

今城:はい。今、上海でも香港でもアフリカのナイジェリアにだってファッションウィークがあって注目されています。こうして世界中が盛り上がっていくなか、日本が胸を張って、パリ・ミラノ・ロンドン・ニューヨークに次ぐ”トーキョー”と声を挙げられるようにしたい。デザイナー陣の力を考えると何も夢物語だとは思いません。ただし、そのためには、ブランドの数もスキルも必要ですし、ハブとなるメディも必要です。そういった意味で、我々もLOOKSTANDさんの今後を楽しみ観させていただきます。

リッキー:今日は本当にありがとうございました。

Photo: Jun Namekata Text: Takako Nagai