adv

LOOKSTAND_CROSS TALK vol.3-1

「Nigrec Co.,ltd」代表兼アートディレクターのNescoさんに聞いた
LOOK BOOKの本当の役割と面白さ

LOOKSTAND_CROSS TALK vol.3-1(「Nigrec Co.,ltd」代表兼アートディレクターのNescoさんに聞いた<br>LOOK BOOKの本当の役割と面白さ)

本媒体「le LOOK STAND」の編集長、佐藤リッキーがゲストを訪ね、 “LOOK BOOK”の可能性を探っていく連載の第3回。

毎シーズン、各ブランドが、“LOOK”を形にするまでには、ブランド、製作チーム、PRと 多くの人が携わり、知恵を絞っているはず。そんな“LOOK BOOK”と密な関係にある方々に、 その意義や疑問を問いかけ、ファッションの現在に迫る連載企画。

第3回のゲストは、『Nigrec Co.,ltd』代表兼アートディレクターのNesco(ネスコ)さん。 紙とWEBを問わずに幅広くクリエイティブを展開し、LOOKBOOKはもちろん、商品パッケージから動画制作、果ては企業ブランディングまで手掛けるファッション業界内で名うてとして頼られる存在です。 ではその横断的なクリエイティブの中に観るLOOK BOOKの役割とは何なのか? お話を伺いました。

Nesco(ネスコ)さん
「Nigrec Design Co.,ltd」代表 アートディレクター。ブランドや店舗のロゴデザインのほか、カタログやWEB、パッケージデザインに企業のブランディング、動画制作まで幅広く手がける。アパレルブランドでは「CA4LA」、「BIRKENSTOCK」、「HELLY HANSEN」のビジュアル制作を継続して手掛け、2018-19AWシーズンには「BEAMS LIGHTS」「FREAK’S STORE」「Converse TOKYO」などのカタログ制作を担当。

佐藤リッキー
本媒体「le LOOKSTAND」編集長。合同会社「Yello」CEO。 清澄白河のホテル「LYURO」、「第一ホテル」チャペル、「H&M」ショッパー、「蔦屋書店」シーズングラフィック、「LOFT GINZA」のオープニングアートディレクション等、コンセプトメイキングから空間、グラフィックデザイン、プロダクトのディレクションなど活動は多岐にわたる。現在、毎年採れたてのオーガニックコットンで作る違いを愉しむ今年のタオル「コットンヌーボー」、創業1585年の扇子ブランド「西川庄六商店」など複数のプロジェクトを進行中。

LOOKSTAND_CROSS TALK vol.3-1(「Nigrec Co.,ltd」代表兼アートディレクターのNescoさんに聞いた<br>LOOK BOOKの本当の役割と面白さ)
―ファッション業界の特徴。(1)「自己提案」
リッキー:Nescoさんはアートディレクションを務められる幅がとても広いですよね。紙とwebを問わず、さらにその守備範囲はファッション業界に留まらない。そんなNescoさんから見て、LOOKBOOKの位置付けについて思うところがあれば、是非聞いてみたいです。

Nesco:そもそも僕のキャリアは、生産や営業を含めたファッションの裏方からスタートしています。まず“ものを売る”ということがどういうことかをそこで学びました。次第に自分も何かを作りたいという気持ちになり、それまで勤めていた会社を辞めて、1998年にアパレルブランド「モーテル」を立ち上げます。自分のブランドですから、当然自分の思い通り自由に取り組める。これってどういうことかっていうと、非常に自己発信力の高い作業だということなんですね。例えば、もともと僕はグラフィックデザインを学んでいましたが、ただのグラフィックデザイナーではこうはいかない。クライアントのオファーがあって、その意向に沿う形で初めて仕事が成り立つわけです。もちろん提案力やセンスは必要ですが、自己発信型とは言えない。そう行った点で決定的に違うんです。純粋に自己発信したデザインに対して、バイヤー、エンドユーザーの共感を得られれば成立します。前職での人脈や経験がベースにあった自分には、既にその肌感が備わっていたので、ブランドの立ち上げはスムーズに進みました。

リッキー:確かにファッションは自己提案型ですよね。僕自身も空間プロデュースやグラフィックのディレクションをしていますが、クライアントからの依頼がなければ仕事は始まりません。

Nesco: 有難いことにブランドの好調が続き、毎年30型ほどを作り続けました。ところが、あるとき緩やかにビジネスが下降していく気配を感じたんです。

リッキー:なるほど。ブランドの展開が長期にわたるほど、芯の通ったブランドイメージを維持しながら新鮮なものを提案し続けることは難しくなるものですよね。

LOOKSTAND_CROSS TALK vol.3-1(「Nigrec Co.,ltd」代表兼アートディレクターのNescoさんに聞いた<br>LOOK BOOKの本当の役割と面白さ)
―ファッション業界の特徴。(2)「化学反応」
Nesco:その打開策として、変化を求めて始めたのがLOOKBOOKの制作でした。これは大いに意味があった。スタイリストさんによっては自分の構想と全く違う発想をする方がいらっしゃいます。例えばジャケットを裏返しに着せたりされると『普段はそんな着方はしないよ!』と思ったりもしますが、面白いと感じることも多い。そういった刺激を受けることで自分の服作りの幅が広がっていくのを感じましたね。結果、LOOKBOOKの制作に関しては、スタッフのクリエイティビティに委ねてみるというスタイルが定着しました。

リッキー:LOOKBOOKという二次創作を第三者とすることでブランドの世界観を増幅させたり変化させられるんですね。常に新鮮なイメージを提供する必要性を感じとって、その手段としてLOOKBOOKの制作を始められたNescoさんの直感に脱帽です。

LOOKSTAND_CROSS TALK vol.3-1(「Nigrec Co.,ltd」代表兼アートディレクターのNescoさんに聞いた<br>LOOK BOOKの本当の役割と面白さ)
―OOKBOOKのアーカイブを見る。(1)「自主制作」
リッキー:Nescoさんがこれまでに制作されたLOOKBOOKを拝見できますか。

Nesco:まずは自分のブランド「MOTEL」の初めてのLOOKBOOKです。当時は小さなドメスティックブランドがLOOKBOOKを作るのは珍しいことだったんですよ。2部製のようになっていて、2冊子が1冊にまとまっている体裁です。片方のカメラマンは田邊剛さんで、福生のベース付近でモデルをハントしながらのロケ、もう一方は清水将之さんで当時の新宿人形劇場にて撮影しています。あの頃は自分もまだ若手でしたしスタッフも独立したての方が多く、誰もがいい作品を残すことに貪欲でした。そんな彼らの提案で生まれる化学反応が面白く、単純に撮影が楽しかったし、好きでしたね。

毎年、確実に制作をしていくなかで徐々にLOOKBOOKのデザインの幅は広がっていきました。たとえば2010年のLOOKBOOKはサッカーをテーマにしたもの。蛇腹状のつくりで、こうして一覧できるのも特徴です。

LOOKSTAND_CROSS TALK vol.3-1(「Nigrec Co.,ltd」代表兼アートディレクターのNescoさんに聞いた<br>LOOK BOOKの本当の役割と面白さ)

他には、ユニオンジャック型のインビテーションは型を剥がすと徐々に情報が出てくるような仕掛け。これは自分で図面を引きました。印刷会社には嫌がられましたね(笑)。かなり特殊な体裁でしたので、自分で合紙や技法の仕組みを勉強して、何度も専門家と打ち合わせを重ねて実現に至りました。

LOOKSTAND_CROSS TALK vol.3-1(「Nigrec Co.,ltd」代表兼アートディレクターのNescoさんに聞いた<br>LOOK BOOKの本当の役割と面白さ)

リッキー:工夫が素晴らしく、どれも今見ても新鮮ですね。こういったものの制作を重ねるにつれて、アートディレクションの精度が上がった感覚はありましたか?

Nesco:実は最初の5〜6冊目まではみんなの意見が飛び交いすぎて、むしろまとまりがないと感じていました(笑)。次第にこれではいけないなと思うようになり、最終的には僕が全部決めることにした。今思えば、それがアートディレクターとしての仕事のスタートだったのかもしれません。

Vol.2:「アートディレクターが思う制作の複雑化」へ続く

Photo: Jun Namekata Text: Takako Nagai