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LOOKSTAND_CROSS TALK vol.1

にしのやディレクター 西野大士さんに
聞いたLOOKBOOKの今後

LOOKSTAND_CROSS TALK vol.1(にしのやディレクター  西野大士さんに<br>聞いたLOOKBOOKの今後)

本媒体「le LOOK STAND」の編集長、佐藤リッキーがゲストを訪ね、
“LOOK BOOK”の可能性を探っていく連載の第一回。

毎シーズン、各ブランドが、“LOOK”を形にするまでには、ブランド、製作チーム、PRと多くの人が携わり、知恵を絞っているはず。そんな“LOOK BOOK”と密な関係にある方々に、その意義や疑問を問いかけ、ファッションの現在に迫る連載企画。

第一回のゲストは、アタッシュ・ドゥ・プレス「にしのや」代表の西野大士さん。情報源の多様化やSNSによる発信の簡易化によって、価値のあるPRが問われる昨今、この難しい局面でPR会社をスタートさせた西野さんのプレスルームに伺い、その目線からの“LOOK BOOK”について聞きました。

西野大士さん
「ブルックス ブラザーズ」の広報とアイウェアブランド「ayame」のPRを経て、昨年、プレスオフィス「にしのや」をスタート。そのディレクターを務めながら、自身で2015AWよりスタートしたパンツ専業ブランド「NEAT」のデザイナーとしても活躍。「にしのや」では日本最高峰の生地を用いたカジュアル服を提案する「CANTATE」や、東京・吉祥寺のビンテージ時計店「江口時計店」、老舗パンツ専業ブランド「PT01」など国内外15ブランドのPRを担当。

佐藤リッキー
本媒体「le LOOKSTAND」編集長。合同会社「Yello」CEO。 清澄白河のホテル「LYURO」、「第一ホテル」チャペル、「H&M」ショッパー、「蔦屋書店」シーズングラフィック、「LOFT GINZA」のオープニングアートディレクション等、コンセプトメイキングから空間、グラフィックデザイン、プロダクトのディレクションなど活動は多岐にわたる。現在、毎年採れたてのオーガニックコットンで作る違いを愉しむ今年のタオル「コットンヌーボー」、創業1585年の扇子ブランド「西川庄六商店」など複数のプロジェクトを進行中。

LOOKSTAND_CROSS TALK vol.1(にしのやディレクター  西野大士さんに<br>聞いたLOOKBOOKの今後)
―いきなりですが“LOOK BOOK”って本当に必要ですか。
リッキー:このメディアを始動したきっかけは、とあるファッション関係の事務所に積まれっぱなしになった大量のルックブックなんです。僕もデザインで関わることがありますので、このヴィジュアルを形にするまでに、大きな労力と資金がかかっていることは理解していました。だからこそ「これは、本当に届けたい人の目に留まっているのか?」と疑問で。 展示会と実売の時期には半年のずれがありますし、発信者と受け手の間にもねじれがある気がしました。そんな勿体無さを感じながら、西野さんに聞いてみたいのは、まず、いきなりですがルックブックって本当に必要ですか?

西野:大いに必要だと思っています。

リッキー:正直、ホッとしました(笑)。是非、詳しく聞きかせてください。

LOOKSTAND_CROSS TALK vol.1(にしのやディレクター  西野大士さんに<br>聞いたLOOKBOOKの今後)

西野:正直に言うと、国内で小規模に展開するならルックは必須でないかもしれません。もちろん、それはブランドの特性や規模にもよるので一概には言えませんが。その一方で、海外に展開するなら、絶対に作るべきという感触はあります。今年、イタリアのピッティ・ウオモという展示会に出展したのですが、必ずルックとラインシートをリクエストされました。無いと答えると、信じられないという反応が殆どでしたね。

リッキー:それは意外。僕は逆に、ルックブックは日本のファッション業界の中で独自に発展してきた部分があるのかと想像していました。自分の個性を出すことがあまり得意でない日本人に、ブランドのイメージを教科書的に見せる役割として浸透したのかと。

西野:逆なのかもしれません。日本人は、世界的に見ても一般的なコーディネートレベルがとても高いと感じています。工夫があるし、ブランドのルックをそのまま着たりしませんよね。

リッキー:言われてみるとまさに。西野さんのコーディネートは、日本人ならではのスタイルとして海外からも珍しがられそうですよね。

西野: そうなのかもしれません。そんな理由で、外国の展示会では服一枚のモノの良さをとうとうと語るより、一目でわかるかっこよさが大事。国内の方が、素材の特徴やデザインのモチーフ、バックボーンをよく見ようとしてくれる消費者が多い実感があります。

LOOKSTAND_CROSS TALK vol.1(にしのやディレクター  西野大士さんに<br>聞いたLOOKBOOKの今後)

西野: 例えばこの太畝のコーデュロイパンツも、生地の油分を抜いて生地を凝縮させる特殊な加工をしているんですが、これを説明できる英語を準備していっても無用で終わりがち。一目見たフィーリングが大事で、「Amazing!」とは言ってくださるんですが…。その延長線上でイメージをわかりやすく伝えるのがルックであり、ルックブックを作っていないブランドは海外にはほとんど無い状況です。

リッキー: 僕の想像とは違い、日本よりも海外の方がルックブックを必要としているんですね。面白い話を聞けました。今後の自分たちの海外展開にも期待がもてました。ありがとうございます。

LOOKSTAND_CROSS TALK vol.1(にしのやディレクター  西野大士さんに<br>聞いたLOOKBOOKの今後)
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―ハウスブランド「NEATのPRとしては
リッキー:とは言え、ご自身のブランド「NEAT ではルックを作っていませんよね?やはり、ご自身がデザインから卸しまで一貫して担当される中で、あまりルックブックの必要性を感じていないのでは?

西野:そんなことはなくて、先ほどお話しした通りルックはもちろんあるに越したことはないです。作りたい気持ちはあってもNEATの規模感やかかるコストを考えると、まだその段階には達していない。その代わりではないですが、今シーズンはプレスルームで私物と合わせたスタイリングをトルソーに組み、簡易なビジュアルを作りました。ただ、他のPRとして優先順位が高いことで手一杯ではあります。

リッキー:といいますと、NEATのPRでは何の優先順位が高く、重要だと思われているんでしょう?

西野:実際に、何をしているかというと、”PRをしないPR”。キャラバンに行ったり、プレスリリースを書いたり、一般的なプレス業務を一切やっていないんです。編集やスタイリストの方々が面白がって自主的に探しに来てくださるのが理想で、それが本当にいいものだと説明をさせていただければ自分からお願いをしなくてもきっと媒体に出してくださると思っているんです。だから、そう思っていただける物作りをするのが、まず、第一。

リッキー:それは”西野大士”という名前が浸透していて、そのご自身が、自ら投資をしてクリエイティブしていくことで可能になっている形なんでしょうね。西野さんがこうして着こなしていらっしゃることが、何よりも説得力のあるPRになっていますから。

西野:月並みですが自分の着たいものを作っていて、嘘が100%ないからかもしれません。

リッキー:結果、デザインとMDとPRがまさに三位一体になっていて、今の時代にフィットしているように見えます。最近よく、そこがバラバラでは成り立たないという話を聞くんです。MD目線のあるデザイナー、またはデザイナー目線もMD目線もあるPRというように、三者が融合していかなければブランドの存続が難しいと。

西野:確かに、“PRをしないPR”というと誤解を生みそうですが、企画段階から売り場まで一貫してPR的な頭で考えているところはあります。それに、いらっしゃっていただいたからには、ゴリゴリにプレゼンしますから(笑)。

LOOKSTAND_CROSS TALK vol.1(にしのやディレクター  西野大士さんに<br>聞いたLOOKBOOKの今後)
LOOKSTAND_CROSS TALK vol.1(にしのやディレクター  西野大士さんに<br>聞いたLOOKBOOKの今後)

リッキー:客観的に見て、PR会社は個人の名が立っている会社と、フラットに多様なブランドのPR業務をするところに大きく分かれているように感じます。これは、ファッションに限らずどんな世界も共通。前者の個人であることを押し出しているからこそ説得力のあるPRが、西野さんだと思うんです。

西野:どうでしょう。自分としては「西野さんに… とご依頼いただけるのは嬉しいですし、そうありたいとは思っています。PRの仕事はお預かりしたブランドを広める仕事ですから、肯定して伝えなければいけないと思われがちですよね。そこで、編集やスタイリストの方にプレゼンをする時に、僕の言葉が「それ本当に思っているの? と疑われるようなPRはしたくない。そういう意味で、ブランドのストーリーもバックボーンも商品自体もすべて自分の中で噛み砕いた上で、良いものは良いということを正直に伝えていけるブランドさんとお付き合いさせていただいてはいます。

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―LOOK BOOKをwebで見せる可能性
リッキー:PRの立場から、le LOOK STANDに何か求めることはありますか?

西野:バイヤーさんが注文を取れる特設ページがあったら嬉しいと思います。ブランドとしては売りにつなげたいわけです。何かそのきっかけがあるところには頼りたい。

リッキー: なるほど。つまりブランドからお店に卸し売りをするための機能ですね。かなりリアル。僕たちもどこかで販売という所にリーチしたいとは考えていました。ただ、ルックブックのページから直接商品が購入できたり、各ブランドのECに飛べるような、顧客に対する販売、つまりB (ブランド)to C(顧客)を浮かべていました。確かにB(ブランド) to B(販売店) もいいですね。

西野:先ほどNEATやそれより小さいブランドはルックブックを作りたくてもできないとお話しした理由の一つは、作っても見てもらう場がないということも一因です。それを見せる場としてのメディアとしてle LOOK SATANDには、期待しています。ブランドの認知に繋がるとより嬉しいですね。

リッキー:それでいうと、le LOOK SATANDが、アップルミュージックのおすすめ機能のように、ユーザーの好きなブランドを類型化して学習し、おすすめできるシステムを組み込めれば無名のブランドを知ってもらえるきっかけにもなると思っています。また、ブランドが海外の展示会に出展する際、自ブランドのURLを紹介すれば一括でルックブックをダウンロードできるようになると、大きくないブランドさんにとっても便利な機能になりそうですね。

西野:大量の資料を現地まで運ばずに済みますので嬉しいですね。僕は「NEAT」のデザイナーという立場ではお聞きしているような展開に期待する一方、取り扱いブランドの“ルックブックを作る”仕事もしています。ですから、そこにクリエイティビティが詰まっていて、その価値はもっと伝えられるはずだということにももちろん共感しているんです。あるブランドのルックを過去シーズンと比較ができて、シーズン毎にも多数のブランドのルックが見比べられるような場があれば、一つのルックの意味も見えてきやすくなると思いました。

リッキー: おっしゃる通りですね。まずは資料性を高め、シーズン数とブランド数の両方向にデータを積んでいくことを第一に考えています。ただ一つのルックブックだけでは発揮しにくい価値を、群像として見せていきたいんです。

今日は西野さんのお話しを聞けて、ルックブックの本来の価値を再確認させていただきましたし、さらに新しいアイデアが浮かびました。ありがとうございました。

Photo: Jun Namekata Text: Takako Nagai